〜友成本感想の間(5)〜
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★ケイブンシャノベルス
 このノベルスでは永井豪の表紙の印象も相俟って、フレア伝というシリーズが叢書を代表している。各巻ごとに設定を凝らせた冒険譚なのだが、惜しくも未完。いや、まあ、基本だ。単発の作品もそれぞれ特徴があって楽しい。キラー大活躍の「殺戮魔幻楼」、トモナリ描写が澱のように濃縮した「獣革命」、迫力のノワール「狼の子守唄」。どれもはずせない、かな。

◆殺戮魔幻楼 勁文社・ケイブンシャノベルス 1988/01/10発行
 太平の世に人々の心は腐り果て、理由もない無差別殺人をまきおこす人間が満ちていた。世田谷に現れた男もまたその一人だった。高級マンションに乗り込み住人を次々と血祭りにあげるその男は「キング・キラー」と呼ばれた。マンションを警備する警備会社は重火器を携えて乗り込むが、そこはなぜかこの世のものではない霊的な異空間になっていたのだった!人々の腐れた心が瘴気と化したか、マンションの中で次々と起こる怪奇現象を前に、警備会社のコマンドーたちは戸惑いを隠せなかった……。

 なぜ霊的な空間になるか!そんなことは聞かぬが花。ここは現実をあるがままに受け止めるがよし。そういうもんだ。とにかく、わけのわからんパニックホラーとしては秀逸の出来だと思う。導入部のシリアルキラーの恐怖、冴え渡るトモナリ描写。中盤以降の異空間との邂逅には「何だこりゃ」感をおぼえつつも、ページをめくる手は止まらない。そしてパニックホラーとしてはあまりにベタな、かつ効果的なラスト。トモナリエンテーテインメント、かくあるべし。お腹いっぱい、そして、読み捨て御免!ここ重要。電車の中に置き忘れ必至。そういうノベルスとしては、自信をもっておすすめします。
友成はずっと、このことを言い続けてきている。
今どき誰も、人の生命など尊重していない。(略)機械を壊すのも、人間を殺すのも、大差なくなっている。

コマンドーたちが乗り込んでいくマンションの中は…!なんでやねん。
壁面でも天井でも床でも、びっしり埋め尽くした人体が、溶けていた。手や脚、乳房、臀部、下腹、脇腹……でたらめに覗くそれらが、グロテスクに変形しつつ、輪郭を曖昧にした。
キング・キラー:★★★★★
なぜか異空間:★★★
やっぱりバタ狂うコマンドー:★★★★★

◆獣革命 首都圏大パニック 勁文社・ケイブンシャノベルス 1988/09/20発行
 通勤ラッシュに人々のイライラ感が高まる高田馬場地下鉄駅。しかしホームに滑り込んできたのは自衛隊の歩兵戦闘車だった!戦闘車はホームにひしめく通勤客に躊躇なく発砲。これが自衛隊による謎の武装蜂起のはじまりであった……。理由も思想もない無政府革命に、首都圏は恐慌状態に陥る。各地でくりひろげられる凌辱と殺戮、それが彼らの掲げる「真の自由」であるのか……。

 頭イカレた隊長であるとか、超人間的な兄妹であるとか、魅力的なキャラクタは登場するものの、物語はただただトモナリ描写の連続。大筋では、超人間的存在になった兄妹の妹がイカレ自衛隊に拉致凌辱され兄が助けに向かう、というようなストーリーになるのだが、まったくオチも用意されないまま、カタストロフィだけが続く。ただ単純に、その描写が好きな人が、楽しむために読めばよい本なのだろう。物語性を求めるのならば、読む必要はない。
 しかし、しかしですよ、この本は友成がずっと追求し続けてきている、人間が築いてきた脆弱なものの破壊をとことん追求した本なのである。物語というオブラートでつつんで発表してきたものから、あえて物語性を排除することによって、人間の本性ってものを非常に生々しく見せているわけ。救いはないんだ。ないんですよそんなもの。わかりきってはいることだけれど、それを見せられるとギリギリと心が軋むでしょう?
 とか勝手に語ってもさ、あとがきを見れば「書きたかったんだよね〜」で終わってるんだけどさあー。
要は、そういうことなんだ。
無政府状態の、廃墟と化した街並み。しかしその廃墟が、人間性をすべて破壊し尽くしたところに生まれた、まさに大自然と等質のものに感じられる。
人でなくなる兄妹:★★★★
危険な隊長:★★★★
さらば、人間たちよ:★★★★★

◆狼の子守唄 勁文社・ケイブンシャノベルス 1989/02/10発行
 一匹狼の殺し屋・神原は、稼業から足を洗い身を固めようとしていた。だが何者かの手によって恋人が誘拐・殺害される。復讐を誓う神原は再び殺し屋となり、仕事を請け負いながら恋人を殺した相手を探しはじめる……。

 出だしは戦慄のノワールである。誘拐・凌辱された恋人を助けにいったところが、恋人は膣に仕込まれた時限爆弾で爆死。恋人の血肉を浴びながら復讐を決意すんだぜ。んなもん、読みたくなるに決まってんじゃんねえ。しかし、ここで物語は友成作品としては異例の展開となる。復讐鬼と化すはずの神原は、超人的な存在ではなく、課長島耕作なみに悩める中年男性なのだ。あくまで「ヒットマン」だった神原にとって、本領は狙撃であり、いかに腕におぼえがあるとはいえ、チンピラに囲まれただけでも無傷ではいられない。そういうリアリズムをもたせておきながら、復讐の相手は友成的な超人たち。その怪物を相手に神原がどう立ち向かっていくのかがひとつの見所である。
 ただ、これだけの面白い発端、面白い設定を擁しながら、実際の出来はというと今ひとつ。理由は簡単、ページ不足ですね。後半の怒涛の展開にほとんど筆が割かれてないんだもんなあ。個人的には不満はないのだけれど、ラストも尻すぼみで歯がゆくなってしまう。まったく、いつものこととはいえ、勿体無いよね。
戦慄の発端。
(眼前で恋人が爆死して)神原は、頭から涼子の肉飛沫を浴び、ゲタゲタ笑いだした。「奴ら、素人め、それっぽっちの火薬で、おれまで殺せたつもりか!」顔面についた肉片と血糊を、掌でゴシゴシ擦った。擦りながら笑い転げた。
戦慄の発端:★★★★★
地味ながらも鮮烈な復讐劇:★★★★★
終わんの早いよ!:★

◆邪神殿の少女 女戦士フレア伝1 勁文社・ケイブンシャノベルス 1990/08/10発行
 フレアは、失われた祖国を探す流浪の旅を続けるアマゾネス。強大な力を秘める魔剣イスカンダルを駆り、屈強の戦士にも何らひけをとるところはない。しかし、立ち寄った悪徳の街・ソドムで事件にまきこまれ、悪の大僧正一味に追われる身となってしまう。フレアは策にかかり魔剣を奪われ、捕われてしまい、当たりまえのように陵辱されることに。処刑予定を目前にしながら、同じく捕われの身である薄幸の少女との触れ合いを経て、魔剣を奪還する策を練る。果たしてフレアの運命やいかに?

 非常にマンガ的・アニメ的なネタを、抜群の筆力で冒険活劇小説に仕立て上げている、という印象。友成作品には随所にアニメオタク好みのガジェットが散見されるが、このシリーズはヴァニスを超えてそういう人間の琴線に触れるものであろう。まかり間違ってビームエンタテイメントあたりがアニメにしていてくれてもよかったのに、と思ったりもする。やっていることは無茶苦茶だけれど、友成作品にしては、物語もきちんとしていている。「リヨン伝説フレア」が好きだった人、どうぞ。
食べる系は苦手なのよね〜。
中身を啜った。腐肉汁を顔の両脇にダラダラと垂れ流しつつ、さも美味そうに中身を飲んでゆく。彼女らは、死者の臓物が不死を約束すると、信じているのである。
フレアの活躍:★★★★
実はけっこうエッチなシーンが多く:★★★
物語を背負わされた少女・カルミラ:★★★★★

◆絶海の黄金郷 女戦士フレア伝2 勁文社・ケイブンシャノベルス 1990/12/10発行
 アマゾネスの残党が海を越えた南方の地にいるという噂を聞いたフレアは、南方に移住しようとしていた北方の蛮族と行動を共にすることになった。しかし、移民船は魔の海域にとらわれてしまう。魔の海域をあやつる謎の魔術師との戦い、移民船内での造反、多くの事件を経つつ、フレアの旅は続く……。

 続いては海洋篇。途中、唐突に挿入されている、廃墟と化した街に暮らす餓鬼たちの描写が痛々しい。肉の儀式に登場した、曝された女性を罪悪感もなくいたぶる子供たちとは違った、無秩序・無力ながらも必死に生き延びようとする子供たち。泣き喚きながら兵士に集団で群がり切りつけていくシーンはあまりに異様だ。まったく意図が読めない挿話であるが、友成作品にはしばしばこういうシーンがあらわれる。また、フレアと戦士として通じ合うオークが日頃はその醜姿から虐げられているという設定など、なかなかハード。魔術師が使う術法が色欲を刺激するものであるといったお約束の展開もあるが、全体に無常感が漂う佳品であると思う。フレア伝なら、これかな。
これも常に言及されてること。
汚らしい……何が、神に仕える高貴な身体だ。本当にそうなら、こんなに汚らしいはずないじゃないか。大小便はするは、こんなに臭い臓物は持っているわ……なあ、そうは思わないか
愚鈍なオーク・ポルクの覚醒:★★★★★
魔術師ブードゥーの脅威:★★★
兵士を切り裂く子供たち:★★★★★

◆虚空の要塞島 女戦士フレア伝3 勁文社・ケイブンシャノベルス 1991/07/30発行
 南方の未知の大陸に渡ることを決意したフレア。しかし港町での無謀な飲み比べに泥酔してしまい、海賊との争いの末、突如あらわれた空中要塞・アルバロンに拉致されてしまう。しかも、フレアの手から滑り落ちたイスカンダルは海賊の手にわたってしまうのだった。アルバロンを操るのは、アマゾネスの末裔たるフレアと魔剣イスカンダルを利用した大呪術を画策するブニイプスの軍隊だ。一方、フレアに惚れてしまった海賊の長・グラントは、イスカンダルを手にフレア奪回作戦に向かう……

 続いてSF篇。表紙に描かれている脱力のロボットがブニイプス軍あやつるところの「魔人」なのだが、まあ、中を読んでもそんな感じの脱力ロボット。ガジェットを挙げれば、ヒロインが空中要塞にとらわれて海賊が助けに行くっつーことで要はラピュタなんだけど、正しい友成ファンはそんなことは気にしないのだった。物語として特筆すべきは、フレアの少女時代のエピソード、特にアマゾネスとしての生い立ちが細かく描写されている点であろう。ファンは絶対に見逃せない。
え、続き出てないの!?
再び捕まったフレアを、どうやって救出するか。グラントの頭の中は、その考えで一杯になっていた。(終)
魔人!:★★
キマイラ!:★★★
グラントって友成作品には珍しい純情な猛者ですよ:★★★★★

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