〜友成本感想の間(3)〜
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★奇想天外ノベルス
 多くの著作/著者紹介で代表作に挙げられている「人獣裁判」だが、見かけることはほとんどない。その内容はというと、「イカレテいる」「狂っている」という評判とは裏腹に、それほど精神的なイヤ感を誘う話ではないだろうと思う。描写が狂っているのではなく、「狂った人が書いている」という印象が強い。したがって物語の面白さを期待してはいけない(実際、あまり「必読!」などと煽ろうとも思わない)本だ。しかし、素面に戻って書かれた爆笑の「あとがき」と(特に新編のほう)、『宝島』掲載原稿を再録した「拷問あるいは残酷トレイニング」(正編巻末)ははずせないだろう。したがって、「必携!」である。ああ、結局煽ってしまった。

◆人獣裁判 大陸書房・奇想天外ノベルス 1987/06/15発行
 パリの大広場で行われている公開処刑に興奮しながら、サド侯爵は自らの人生を振り返る。叔父・サド神父のエブルイユ修道院で暮らして教えこまれた「快楽」のすべて。修道院に出入りしていた医師マージュの「人体改造」術。家庭教師アンブレ師の繰り広げる宇宙論。厳格な進学校ルイ・ル・グラン中学での生活と、学友たちと結成した「破戒同盟」の活動……。

 サド神父の所業や破戒同盟の拷問シーンに眼を奪われがちではあるが、実際に話として面白いのはアンブレ師の講釈であり、眼力狂人のくだりである。友成の凄絶な描写や爆笑の台詞回しを期待する人には退屈極まりない部分だが、この本の「狂いっぷりオーラ」はここから溢れている。特にアンブレ師が展開する宇宙論は当時の友成純一という人が一番書きたかった文章だろうし、読み逃してほしくない。あと、拷問シーンよりは、「おい、神様よ、いるんなら十数える間に罰を下してみろ!」と集団で自慰にふけるシーンが狂気的でいいよね。
アンブレ先生、そんなこと言われましても!
すべての現象は、三角形に還元しうるのだ。トポロジーのシェンフリースの定理により、これは証明されている。すなわち、『空間R^nに閉曲線cがあればcの内部とcを合わせた図形は三角形(内部も含む)と同相である』と。だから、宇宙が三角形をしていても、あるいは三角形を宇宙と考えても、一向に構わないわけである。いや、むしろ、トポロジー的・集合的無意識下においては、宇宙は三角形なのだ
サド侯爵:★★★
アンブレ師:★★★★
眼力狂人:★★★★★

◆新人獣裁判 狂殺の森 大陸書房・奇想天外ノベルス 1987/07/13発行
 シュバルツバルトの森の中、「疾風」と名乗る盗賊どもがいた。その首領は半獣人のような異形の容貌をなしていたが、この男こそは名門刑吏アングスト家の後継者として生き、その道を捨てた男グラーフであった。その弟フランツはすべての刑罰に達した死刑執行人として名を馳せていたが、兄グラーフが持ち去った家伝の印章を求めて旅に出る。

 実在した天才刑吏フランツ・シュミットをモデルとするフランツ・アングストの拷問は、鮮烈を極める。犯罪をおかした人間に刑罰を与えることが仕事であるのだから、その責務はしっかり果たしますよ、というやつだ。それでも彼はあくまで人道的なのである。その芸術的な拷問に、彼がサディスティックな自意識を見せることもない。ただ単純に、罪人に対して可能な限り苦痛が長引く拷問を実施することを追及しているだけだ。ある種の諦念感すらも思わせるフランツは、友成作品でも異質のキャラクターだといえる。その「ザッツトモナリ」な描写とのギャップがたまらない。
 すべてを為すがままに生き、半獣人の容貌を持つグラーフは、はじめて「人獣裁判」というタイトルにふさわしい存在である。確かに、「はたして人か獣か」という点では、4章で嘘吐き少女に石を投げる民衆であるとか、6章で一家を皆殺しにする盗賊たちのほうがふさわしい存在かもしれない。しかしその象徴としてのグラーフの姿、境遇、狂気性は群を抜き、そういったものをすべてひっくるめてラストにフランツが問いかけるセリフは特に印象的だ。
 そしてやはり、いつものことながら、真に狂っているのは周囲をとりまく人間たちなのだ。

 あとがきで、この後に続く物語の魅力的な構想が語られている。サド侯爵とフランツの出会い、そこにファウストやハーメルンの笛吹きがからみ……と、聞いただけで読みたくてたまらない。ぜひ、執筆していただきたいものだが。
あとがきから。ボクが友成作品を読む理由はここにあるのだ、と、最近気付きました。
下ネタを根っこに据えると、何を絡めても凄いパワーが出る。グロをやると非常識なまでに気持ち悪くなるし、お笑いをやるとこれまたやたら可笑しい。こんな面白い刺激物を、スケベにしか利用しない手はない。ぼくは無能なのでグロしかできずにいるけれど、ほかにも何ぼでも展開しようがある。これをやってみたいというのが、狙いです。
フランツの拷問:★★★★
グラーフの拷問:★★
爆笑のあとがき:★★★★

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