〜友成本感想の間(10)〜
[制覇の間][BNB]


★大陸ノベルス
 暗黒細胞ではクトゥルーを意識したというが、舞台となる渡久呂町の魔力が勝ってしまい、叢書としてみると渡久呂町サーガがまとまっている状態。この東京S駅裏にある架空の空間が見せる幻夢は友成作品の中でもかなり異質だ。モデルは歌舞伎町でありゴールデン街なのだろうが、都心の300メートル四方の空間に阿片窟があるという突飛な設定は極上のエンターテインメントの原動力となっている。必読の叢書である。

◆暗黒細胞 大陸書房・大陸ノベルス 1988/07/05発行
 人間を滅ぼそうという魔族の血をひく者がいた。魔族から地球を守るために幼いころから特殊能力を鍛えられていた者がいた。魔族が東京に目覚めたとき、地球を守る秘密結社「血の塩」は人造戦士を作り上げんと奮起しているところだった。迫る魔族を前に、新島博士は自らの体を戦士として捧げる。魔族と「血の塩」の決戦がはじまる……。

 天使も悪魔もそれぞれ覚醒するという設定が楽しい。とはいえ天使サイドが本当に純粋なる守護者かというともちろんそんなことはなくて、魔族と戦えるのが嬉しくて暴走しちゃう奴とか、先祖から受け継いできた技を磨くことだけにしか興味がなくなっちゃった奴とか、いかにも友成世界の住人ばかりだ。そのまま雪崩のようにラストの決戦とカタストロフまで突き進んでしまうのが勿体無いほどのスピード感で、これはおすすめできる。友成の小説で「楽しみたい」方にはうってつけだと思います。
もう1人の天才科学者・来栖が決戦の場に挑む。
新島君、待ってい給え!今、ぼくも行くからね……ずるいぞ、ほんとに、素晴らしい力を一人占めするなんて!!
魔族の覚醒:★★★★
十人の戦士:★★★★★
世界よ、さらば:★★★★★

◆髑髏町綺譚 大陸書房・大陸ノベルス 1989/02/10発行
 渡久呂町の日常をつづる短編集。
またあの男だ。「いい女、いないかなあ」とつぶやきながらうろつくだけの男。狂助。『幻夢を吐く男』
小生、当年とって六十五歳。森羅万象の不思議について思索をめぐらせる毎日。さて、子供というのは、どうやってできるものか?『問答・子供の造り方』
麻薬の温床である髑髏町では刑事が潜入捜査をしているのだ。そんな中に。『髑髏町探査行』
快楽の研究を続ける猿島博士がたどりついた秘薬『髑髏町の性科学』
髑髏町を本気でつぶそうとする駅前再開発計画『髑髏町の支配者』
町長が祝福を与えますぞよ『春の運動会』

 いかした描写のオンパレードで、あたしゃすれちまいましたよ大抵のことじゃあ驚けませんというむきにはこの本を試していただきたい。『幻夢を吐く男』の作りにはその先の方向性を期待させもするのだが、続く『問答・子供の造り方』にその期待は逆方向へとグジャグジャに押し戻される。そこから先は友成ワールド全開だ。『春の運動会』までたどりつくころには半分ラリっているかもしれない。この本は通勤電車の中で読んだが、自分の周囲の空間が異質になっているのを感じた。いやー、おかしいよ、この短編集も。『春の運動会』は乱歩「地獄風景」の運動会シーンそのまんまだけど、これはご愛嬌か。
老哲学者は世界を知る。
そうか、これは単なる排泄器官ではなかったのか……
いい女、いないかなあ:★★★★★
子種が出る!:★★★★
♪レッツ、キッス、頬寄せて……:★★★★★

◆闇の謝肉祭 大陸書房・大陸ノベルス 1990/06/23発行
 都心に巣食う魔の阿片窟、渡久呂町には麻薬工場の側面もあった。ここをおさえることができれば、日本の裏世界は制覇したも同然だ。そう考える日本最大の暴力団月島組は、傭兵部隊を送りこんだ「闇の謝肉祭」。超能力と麻薬には深い関わりがあると考えた科学者がいた。男は渡久呂町に研究所を設立し、中毒者をとらえては人体実験をくりかえした「地獄変」。

 1段組のスカスカノベルスで、ぼったくり感のある書き下ろし中篇集だ。2篇の中篇が収録されていて、それぞれ章立てで最初に掲げられているのが「七人の侍」「地獄の黙示録」という章題。いかにも、である。「暗黒細胞」や『髑髏町の支配者』を読んできてしまうと、読者としての興味は、いかにして侵入者がドクロ町に飲みこまれていくのかという一点になってしまう。期待は裏切られず、暗黒細胞にあったような暴走もなく、例えば「闇の謝肉祭」でいえば七人それぞれが意志を持って(傭兵として、だとはいえ)髑髏町に立ち向かい、ある者は取り込まれ、ある者は命を落としてゆく、その過程がしっかりと書き込まれている。一息で書いたのではないかと思えるような異様な迫力に満ちた佳作だと思う。これはおすすめだ。
著者のことばから。なるほど、友成作品の共通テーマだったということか。
ドクロ町は人間の、そして都市の、この闇の部分をクローズアップしたもので……人間の本能の饗宴が始まる。
七人の傭兵:★★★★
傭兵を率いる男・平田:★★★★★
超能力者の覚醒:★★★

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