〜友成本感想の間(1)〜
[制覇の間][BNB]


★初期のケッ作たち
 ガツンと鉄槌を振り下ろす作品群。友成純一は、ことスプラッタパンクに重きを置いた著作について、これら処女作近辺を超える作品を作り出し続けているとは思えない。既に友成なりの到達点というものがここに示されており、以降は手を変え品を変え、なぞって量産しているだけだろう。これらの作品群を読むことで「これが友成か!」と思ってくれればよいのでは。

◆肉の儀式 ミリオン出版・スナイパーノベルス 1985/10/15発行
 収録作:『肉の儀式』・『猟人日記』

 ムラの儀式として嬲られる女性。陵辱。放置。解体。狂信。玩具。何が神になるのか『肉の儀式』。ただただグロい、本当にグロい、サイコパスな変態性欲者・田宮啓一の猟奇愛欲譚『猟人日記』。「鬼畜」だ、とわかって読めば、それほど強い衝撃は感じないかもしれない(いや、まあ、普通マトモには読めないけれど)。ただ、当時強烈なインパクトだったことは間違い無い。世界でも類を見ない(でしょう?)スプラッタパンク作家誕生の瞬間である。表紙で買ってしまったエロ目的諸氏は不憫と言わざるを得ない。見返しの文章を読めば大方の人間は書架に戻すはずだが。

 さて、肉の儀式。物語としては伝奇ホラーの部類に入る。奇形児を産んだ娘が、ムラの有力者たちに忌み者扱いされて陵辱されまくるが、実はその忌み子こそが祭祀としての強大な力を持っていた、という非常にスタンダードな設定。本作を異色作たらしめているのはやはりそのスプラッタ描写であり、目を覆いたくなるような解剖学的描写が随所に見られる。物語のメインは「有力者が不老不死薬を手にするため材料を探す」話となり、ムラの役人たちが胎児を集め出すのだが……、まあ、そういうことさ。ようするに妊婦の腹をかっさばいては胎児持ってくし陵辱もするわけですよ。ああイヤイヤ。そして切り刻まれるイヤさとは別に、「ムラの人間の公衆便所状態になっている白痴の娘」その名も『クソクライ』が受ける仕打ちのような、精神的イヤさを喚起する描写も豊富で、正直、「こんなデビュー作があってたまるかあ!」と。必読です。オチもふるっています。
 猟人日記はもっとひどいかもしれない。お尻から口まで棒を通す、とか、肛門に正四面体の栓をしたら糞が詰まってぐへへへへ、とか、後々幾度も言及される描写が初お目見えする作品でもあるが、一言で言えば、異常快楽殺人者の実録モノを書いてみた、という感じ。とにかく狂っている。「内なる殺人者」のJ・トンプスンも、ブラボーと快哉するに違いない。特に「無差別殺人」の章以降はめちゃくちゃである。なんだこれ。そして狂った主人公に延々と付き合わされた読者は、「狂った主人公が狂ったまま病院に収容されていく」というラストに呆れ果てるはずだ。だが、そんな陳腐なラストにおいて、主人公・田宮がある種の極楽を得ていることに気付かされると、その精神的なイヤさは格別なものがある。だって狂ったもん勝ちってことなんだよ、この小説。ああイヤだ。こちらもオチがふるっています。
綾辻行人もぶっ飛んだ、有名なシーンから。子供は無邪気ですね。(「肉の儀式」より)
(陵辱され、ムラの外れの木に縛り付けられたミナコに)「ミノルなんぞは大喜びで、ミナコの股を開かせ、陰部を拡げて、寺子屋の仲間たちに”性教育”した。さらに子供の残酷さで、棒切れを突っ込んだり石コロを詰めたり、小便やクソを垂れ流すのを観察して笑ったり、中には、面白がってチンポを入れたため、みんなにエンガチョされた子もいる。

田宮さん……。(「猟人日記」より)
ひょいと思いついて、子供の首を母親の胴体に、父親の首を子供の胴体に……といろいろに組み合わせてみた。面白いことは面白いのだが、何しろどの頭も半分に砕け散っているので、今一つ着せ替え人形のリアリティに欠ける。両手両脚もばらして、もっとさまざまなヴァリエーションを工夫してみよう。
残虐度:★★★★
えろえろ度:★★★
狂ってる度:★★★★★

◆凌辱の魔界 マドンナ社・マドンナメイト 1985/12/30発行
幻冬舎・幻冬舎アウトロー文庫 1999/12/25発行
 マッドサイエンティスト・東条の狂える人体実験。それは葉緑体を人体に定着させることだった。猟奇的な実験の果てに、ある時実験体が不穏な動きをし始める。緑の怪物となった実験体と、研究所を守るヤクザたちとの奇妙な戦争。「死神」田沼の死体遊戯やら、一匹狼のヤクザ・鬼道の「殺人ファック」やらを交えつつ、グチャドロエログロな描写の突き進む先にあるものとは。

 凄い噂ばかりを聞いていたこともあって、初めて読んだときの感想は「ちゃんと話になってるんだあ!」だった。ボク自身はそれほど激賞はできないけれど、まあこれ一冊読めばエンターテイナーとしての友成像は理解できるのではないかな、と思う。グロいグロいと言われるけれど、実は友成作品の中ではとてもおとなしい部類の作品だし、プロットもしっかりあって、普通に面白いSFだろう。お上品なエンターテインメントにぜんぜんピンとこない方、そうそう拒否反応も出ないと思いますし是非どうぞ。マドンナ版見返しコメント・赤塚不二夫、解説・竹本健治。幻冬舎アウトロー文庫版解説・大森望。
田沼の死体遊戯より。想像すると滑稽だが、嫌な絵である。これ、けっこうありそうでない描写って気が。他の例、それほど挙げられない。
眼窩から陰茎を押しこんだせいで、溢れた肉がはみ出し、頬や耳もとにかけて肉汁の斑模様が描かれている。
残虐度:★★
えろえろ度:★★
お話として成立してる度:★★★★★

◆獣儀式 マドンナ社・マドンナメイト 1986/03/10発行
幻冬舎・幻冬舎アウトロー文庫 2000/06/25発行
 収録作:『狂鬼降臨』・ショートショート連作「へんたい千夜一夜」

一つ、ヒューマニズムなど信用してはいけない。
一つ、人間は一皮むけば糞袋である。
一つ、人間と鬼は紙一重である。
そして、悪魔の笛と天使のラッパにどれだけの差があろう?

 唐突に地上に降臨する地獄の鬼たち。することない(!)からって、地獄で亡者をいびるように、人間を嬲り殺す鬼たち。人間たちは狂い喚き乱れ叫び交わりぐっちょんぐっちょんになって何もかも超越した先に世界は終わる『狂鬼降臨』。B級スプラッタ映画に触発された少年たちのとった行動とは、などなど、夥しいイメージの奔流。ショートショート連作『へんたい千夜一夜』(マドンナメイト版では抄録)。まさにワン・アンド・オンリー、友成純一の小説世界のすべてがここにある。
 友成小説の最高傑作と謳われる「狂鬼降臨」。
 第一話「青い空―洋子」突然現れた鬼たちの凶行に、世界は崩壊しかけていた。人間たちは逃げ惑い、生き残る者たちはいつ鬼に見つけられるのかと怯えながら隠れ暮らしていた。絶望の果ての肉欲にふけっていた洋子たち3人は、とうとう猟鬼に見つかってしまう。既に林立している「串刺し人間」の仲間入りをしなければならないのだ。ああ、死んでいく……。

 第二話「極彩色の大地―康治」康治は、生き物が腐りゆくさまが好きだった。鬼から逃げるため、町の人々ともども学校の校舎に立て篭もるが、「鬼が人間を嬲り殺す」のを見たくなり、校舎を抜け出す。すると校舎は鬼に乗っ取られ、鬼のための「養肉場」と化してしまう。人間たちは両足を折られ、校舎の中は蛆と糞便と体液の匂いにまみれた空間になっていった。校舎の中には、康治が思いをよせていた宏美もいた。康治は宏美が「人間でなくなっていく」様子を想像して興奮する……。

 第三話「鬼ごっこ―おれ」鬼から隠れ暮らす人間の中に、ムラと呼ばれるコミューンを形成したものがいた。コミューンは山の中で隠棲し、卑弥呼という名の巫女のもと、肉欲に塗れていた。おれは正紀・由紀という兄妹とひっそり暮らしていたが、由紀がムラの男に輪姦され、さらには卑弥呼の指令により殺されるに至り、山を降りる決意をする。半ば自暴自棄になったおれが始めたのは、正真正銘の「鬼ごっこ」だった。絶望に満ちた若者たちと共に、鬼を相手に繰り広げる、死を賭した「鬼ごっこ」だ……。

 第四話「死者の季節―恐助」鬼たちが地上にあらわれた影響なのか、人間は「死ねない体」を持つようになってきていた。街の中を「死にきれない人間」たちが闊歩する。恐助は目の前で餓鬼に嬲られる仲間たちを呆然と見るしかなかったが、嬲られた後も「死にきれない」仲間の姿にある決意をする。「食ってやる、ちゃんと食ってやるから心配するなよ。」

 第五話「鬼呼び―卑弥呼」卑弥呼の「お告げ」は日に日にエスカレートし、ムラの中では拷問とも言える所業が繰り返し行われていた。今日も広場で「処罰」が行われ、それは次第に喧嘩になり乱交になり快楽と陶酔を呼んだ。……惹かれるように、鬼が広場にやってきた。

 最終話「踊る灰色」そして、すべてはひとつになる。

 「狂鬼降臨」が何よりも恐ろしいのは、絶望と狂気の淵に追い込まれた人間どもが自らの欲望に忠実に生きていることだ。ここで描かれる人間ってのは、「どうせ鬼に殺されるなら、その前にあの子をヤッちゃうもんね」って奴ばかり。そしてそれこそはおそらく人間の本質なのだと思う。ここにあるのはマゾヒズムを含んだ「痛みの恐怖」ではなくて、抗うことができない存在を前にしたときの人間の絶望と「開き直り」。そういう人間たちは運良く絶望の淵から舞い戻れたときには「あのときは仕方なかった」と必ず言うんだ。果たしてボクはどうなんだろう?一月以内に死ぬとわかったら、ボクは何をするだろう?友成作品は、「じゃあ、自分は?」と考えはじめたときに強力な言霊となる。「うわあ、痛そう」で終わってる人には、ぜひ再読してほしいなあ。
 ただ物語はそこで留まらず、ついには「人間たるもの」の脆弱さを明かにして終わっていく。まあ、「書いてたら結果的にこういう話になっちゃったのね」というところじゃないかと愚考する次第ではあるが、それにしたって凄いのですよ。狂鬼降臨という小説は。
 「へんたい千夜一夜」のほうはもう読んでくださいとしか言えません。変態です。中には「”彼”は廃人」「透視」のように、友成宇宙論全開なSFもあるけどさ。あと「少女パノラマ」の幻想は強烈だと思います。凄いぞ。
 「なぜ読んでいるんだろう」と自問自答したくなる。そんなこと感じる本というのはなかなか無い。こういう本、生きているうちに1冊くらい読んでもいいじゃないですか?あとはそうですね、狂鬼降臨を読んだなら、友成の映画版「エヴァンゲリオン」評を読んでぐふぐふと笑ってくださいな。マドンナ版見返しコメント・中島梓。幻冬舎アウトロー文庫版には本人のあとがき有り。
「狂鬼降臨」プロローグの、一番好きなくだり。
――ユメヲ、アゲヨウ。神と悪魔が、同時に呟いた。
被虐度:★★★★★
静謐度:★★★★
世界はオレのモノ度:★★★★★

◆肉の天使 ミリオン出版・スナイパーノベルス 1986/11/05発行
 生活無能力者ばかりが住む無法の町・渡久呂町。町には市子という女帝が君臨し、悪徳の限りを貪っていた。そんな町にある日やってきた美女・麗美。麗美は市子のとりまきどもを手篭めにしては殺していく……。かつてこの町に美樹という少女がいた。美樹は姉と共に市子らに凌辱されたのだった。姉の悦子は膣口から小石を腹いっぱいに詰められて殺された。美樹は市子に剃刀で体じゅうをズタズタにされた。麗美は体じゅうを整形して、憎き市子一味をぶち殺すために戻ってきた美樹だったのだ。美樹の死力を堵した復讐劇は、市子を殺すまで終わらない……。

 最初にターゲットにされるチンピラ・小沼殺しのシーンが秀逸である。こんなかんじ。
 こいつからぶっ殺してやろう、と小沼に近づく麗美。そんなこととは露知らず、わっかりやすく、取り巻きを差し向けて麗美を脅して手篭めにしようとする小沼。麗美は鍛えた体と鉄板入りバッグで取り巻きのチンピラ4人をあっという間にのしてしまう。というかぶち殺しちゃう。怯える小沼!しかし麗美が「お願い……殺さないで……」と悩ましげに訴えると、ワッハッハそうかそうかとあっさり納得する。いいぞ小沼!
 さらに「こいつはオレの女にできるぜ」と勘違いする小沼は麗美をアパートにつれこみファック開始。しかし妄想がふくらんでしょうがない小沼さん、挿入前に射精してしまいます。「女をヨガらせる」ことでしかアイデンティティを保てない小沼は意気消沈。しかし「快楽の頂点でぶっ殺してやる」と心に決めている麗美が奉仕を始めると「よし、やってくれ、元気にしてくれ」と強がる小沼。小沼は奉仕する麗美の姿に「今日も明日もヤリまくりだ!」と幸せな妄想を続けます。ここぞ、というところで屹立する小沼のモノを食いちぎる麗美。股間から赤いシャワーを吹きながらアワワワとわめく小沼に、麗美は食いちぎった陰茎をクチャクチャ咀嚼しながら「……死ねば……」。

 友成小説の中でも、出色の面白キャラではないでしょうか小沼。物語はこのあとさらにさらに面白くなっていきます。ほら読みたくなってきたでしょ。読んで読んで。
闘い終わって。
肉のてんこ盛りと化した市子……陰茎を屹立させ口にも陰茎を咥えている岩田……廃馬として射殺されたジャンボ……循環器と化した花村……顔面の皮を剥がれ”男のロマン”を奪われた小沼……狂死した青柳……下腹部に石を詰めこまれ”石女”にされた悦子……そして血まみれになって花村の指でオナニーする麗美……。
残虐度:★★★★★
えろえろ度:★★★★★
小沼って幸せな奴!度:★★★★★

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